リハビリ職の聴診器の選び方と基礎知識
理学療法士・作業療法士も看護師のように聴診器を活用することで患者さんの状態をより深く知ることができます。
聴診器は心音だけでなく、呼吸音、腸蠕動音、血管音などさまざまな情報を得ることができます。
聴診器を活用することでフィジカルアセスメントの幅が広がり、より有効なアプローチを行っていくことができます。
この記事では理学療法士・作業療法士の聴診器の選び方についてまとめてみました。
なぜリハビリ職に聴診が必要なのか
聴診で得られる情報には、主に心音・呼吸音・腸蠕動音・血管音があります。
聴診を行うことで患者さんの体内でどんなことが起こっているかを予測していくことができます。
聴診をはじめとするフィジカルアセスメントを日々行うことで患者さんの状態の微妙な変化に気付くことができます。
急変にもつながるわずかな変化を見逃さないために、患者さんの状態を知るための情報は少しでも多く取っておくことが大切です。
急性期に限らず生活期の患者さんの予防に関わる際にもフィジカルアセスメントは重要な役割を果たします。
患者さんの状態の変化をいち早く見抜くことで、予防的な関わり方や重大な疾病を早期発見することにもつながります。
聴診は生活期の分野に関わる理学療法士・作業療法士にとっても大切なスキルのひとつになります。
聴診器の基本的構造
意外と知られていない聴診器の基本的構造と名称について説明していきます。
まず、聴診器の構造はバイノーラル部とチェストピース部に分けられます。
バイノーラル部は、イヤーピース・イヤーチューブ・チューブの3つのパーツに分かれます。
イヤーピースは外耳孔に直接入れて音を聴く部分です。
外耳孔にフィットさせることで音を適切に耳に伝える役割を果たします。
ソフトイヤーピースとセミソフトイヤーピースがありソフトイヤーピースは大小のサイズに分かれています。
イヤーチューブはチューブから伝わる音を伝達するための金属製の管です。銅製のものは抗菌効果があります。
チューブはチェストピースからの音をイヤーチューブに伝達します。
シングルチューブとダブルチューブに分かれます。
シングルチューブは軽量で取り扱いが良く、ダブルチューブは音の伝達性に優れるというメリットがあります。
チェストピース部は種類によって聴診器の特徴が大きく変わります。
チェストピース部は膜型とベル型の2種類に分かれます。
膜型の特徴
膜型は高音域の聴取に適しています。
使う場面としては、コロトコフ音、呼吸音、心音、腸蠕動音などがあります。
使う機会が多くリハビリの場面では万能選手です。
膜型の扱い方
利き手でチェストピース部を直接握り、聴取部位に押しつけます。
チェストピース部を直接握る理由は聴診器を聴診部位に跡が残るくらいに押しつける必要があるからです。
聴診器を聴診部位に押しつけることで皮膚との擦れる音や周囲の音をカットし、振動を伝えやすくする効果があります。
ベル型の特徴
ベル型は低音域の聴取に適しています。
使う場面としては、コロトコフ音、過剰心音の聴取に用います。
リハビリの場面ではベル型を使用して聴取する必要性がある場面は少ないです。
ベル型の扱い方
利き手でチェストピースのつけ根の部分のチューブを持ちます。
皮膚に軽く当てながら、聴診部位に密着させるように注意します。
聴診部位に強く押し付けると皮膚が膜の働きをしてしまい低音が減弱してしまいます。
また、皮膚との隙間があると音の聴取が困難になります。
理学療法士・作業療法士の聴診器選び
リハビリの場面では膜型の聴診器があれば、ほぼすべての場面で対応可能です。
予算があればベル型の機能が付いているものを選べば十分に使用できます。
聴診器はチューブの性能によっては雑音が多くなって聴き取りにくい物があります。
ある程度値段に比例するところもあるので1万円前後の物を選べば間違いないでしょう。
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リットマン 聴診器 ライトウェイト II SE Burgundy (2451) Littmann Lightweight ステート
- ジャンル: 医薬品・コンタクト・介護 > 医療計測器 > 聴診器 > ダブルヘッド
- ショップ: 聴診器のパネシアン
- 価格: 7,400円
わたしのおススメはリットマンの2種類の聴診器です。
どちらも使用したことがありますが、リハビリ中のフィジカルアセスメントには十分な性能があります。
聴診器の付け方と使用上の注意点
どんなにいい聴診器があっても付け方が間違っていると適切に使用することができません。また、聴診器には使用上の注意点もあります。
聴診器の付け方
聴診器のイヤーチューブ(金属部分)には角度がついています。
聴診器はイヤーチューブがハの字になるように装着するのが正しい付け方です。
これは、人間の外耳孔は斜め前方を向いているので、聴診器からの音がまっすぐ鼓膜に届くように工夫されています。
また、ハの字に装着することで外耳孔とイヤーピースが密着します。
外部の音が遮断されることで適切な聴診を行うことができるようになります。
聴診器の使用上の注意点
聴診をすることで患者さんに不快な思いをさせたり、感染症のリスクを軽減するために聴診器には使用上の注意点が3つあります。
チェストピース部を清潔に保つ
チェストピースは患者さんの肌に直に当てる物です。
ひとりの患者さんに使用したあとで次の患者さんの聴診を行うと、前の患者さんの病原菌を移動させてしまうことにつながります。
院内感染を防ぐために聴診器のチェストピース部は毎回消毒するようにします。
チェストピース部を温める
上でも述べましたがチェストピース部は患者さんの肌に直に触れます。
金属製のチェストピースは冷たくなっていることがあります。
冷たいチェストピースが患者さんの肌に触れると不快な侵害刺激になってしまいます。
患者さんの身体の防御反応が出現してしまい適切なフィジカルアセスメントができなくなってしまう恐れもあります。
聴診を行う前にはチェストピース部を清潔な手で触れてみて、冷たくなっていないかを確認します。
もし冷たくなっているときには手で温めてから聴診を行うようにします。
聴診器を首にかけない
医療者が着用しているケーシーなどの制服は、感染源に暴露しているため不潔です。
せっかくチェストピース部を毎回清潔にしても汚染されたケーシーに触れてしまっては意味がありません。
聴診器を首にかけると取り扱いが楽ですが、感染のリスクを高めてしまいます。
また、聴診器を首にかけることで物にぶつけてしまうことがあります。
聴診器のチェストピース部は繊細な構造になっています。強くぶつけたりすることで聴診の性能が下がってしまうこともあります。
せっかく性能の良い聴診器を持っていても、いつの間にか聴診性能が下がってしまっていることもあります。
結論:膜型チェストピースで価格帯は1~1万5千円くらいの聴診器が最適
リハビリ職が使う聴診器は高額な物である必要はありません。
チェストピース部も膜型があれば十分対応していけます。
いい聴診器を揃えたとしても適切な使い方ができていなければ性能を生かすことができません。
聴診器の正しい使用方法についてもしっかりと頭に入れてフィジカルアセスメントに役立てていってください。