30代の小さな成功者

「手の届く範囲の小さな成功」を目指す30代男の人生逆転への奮闘記

MENU

【フィジカルアセスメント】脈拍測定の目的とリハビリへの活かし方

f:id:rehabilisan:20170815183636j:plain

 

脈拍測定は患者さんの循環動態を簡便にフィジカルアセスメントすることができます。

リハビリの場面でも運動前後の評価や負荷量の調節に重要な役割を果たします。

 

この記事では脈拍測定から得られる情報とリハビリへの活用法について紹介していきます。

 

脈拍

 

脈拍は心臓の収縮によって生じます。左心室が収縮することにより心室内部の血液が大動脈に送り出されます。このときの大動脈への圧力は通常そのまま末梢動脈に伝わります。末梢部の動脈を触知した際に感じる圧力は、この心臓からの圧力を反映しています。脈拍は心臓の収縮を反映しますので通常は心拍数と脈拍は一致します。

 

例外として、末梢動脈の閉塞などの末梢血管の循環障害がある場合には心拍数と脈拍数が一致しなくなります。また、心室期外収縮などの不整脈がある場合には心拍数と脈拍数の不一致が生じます。不整脈がおこると、心臓内に十分な血液が貯留する前に心臓が収縮するため心臓からの拍出量が少なくなります。心臓からの血液の拍出量が少ないため末梢動脈では脈拍が生じなくなります。結果として心拍数に対して脈拍数が減少することになります。

 

リハビリのPOINT

脈拍測定はリハビリでの負荷量の簡便な評価に役立ちます。運動前後での脈拍数の変化を把握し過負荷になっていないか、負荷量が少なくないかを評価するために役立ちます。数値として測定できるので客観的指標としても有効です。

 

重要な脈診部位

 

身体には末梢動脈が体表近くを走行している部分があります。末梢動脈が体表近くを走行している部位では脈拍の測定を行うことができます。以下に臨床上重要な脈診部位を紹介していきます。

総頸動脈

 

総頸動脈を触知するためには、まず頚部の甲状軟骨を触知します。甲状軟骨のやや下方で胸鎖乳突筋の内側を触知します。甲状軟骨より上部で触知してしまうと頸動脈洞を圧迫してしまいます。頸動脈洞には血圧受容器が存在します。血圧受容器を刺激することで血圧低下や徐脈を引き起こすリスクがあります。

総頸動脈は衣服などで覆われておらず簡便に測定が行えます。心臓からの位置が近いため血圧が低下した際にも触知しやすいため患者さんの血行動態の把握に重要な役割を果たします。

 

リハビリのPOINT

総頸動脈は拍動も強く発見しやすいため緊急時の脈拍測定部位としても重要です。橈骨動脈では血圧80mmHgまでしか触知できませんが総頸動脈では血圧60mmHgまでは触知可能です。内頸動脈にプラーク(狭窄)がある場合には血管音の聴診も重要です。不安定性のプラークの場合は圧迫することでプラークの破綻を起こさないよう注意が必要です。

上腕動脈

 

上腕動脈を触知するためには、肘関節のやや内側を触知します。上腕動脈は上腕二頭筋の筋腹の内側を走行しています。上腕部の上腕二頭筋の膨隆部の内側を触知すると発見しやすくなります。

上腕動脈は橈骨動脈が触知しにくい場合や血圧測定の際に利用します。血圧測定ではコロトコフ音の聴取のために聴診器を当てる部位になります。

 

リハビリのPOINT

上腕動脈の触知をするタイミングはリハビリ中には少ないですが血圧測定の際に位置の特定が重要になります。上腕内側にあることを頭に入れておくことが大切です。

橈骨動脈

 

橈骨動脈を触知するためには、前腕の遠位部の橈側(母指側)を触知します。人によってやや走行している位置にずれがあるので前後数cmほどずらしながら触知してみると発見しやすくなります。

橈骨動脈は衣服で覆われておらず簡便に測定を行える部位です。初回の介入時には橈骨動脈の脈拍の左右差を触知して末梢動脈の血行の左右差を評価しておくことが大切です。

 

リハビリのPOINT

橈骨動脈の触知はリハビリでは最も頻繁に使います。初回介入時には左右差の有無をチェックしておきましょう。上肢の循環動態の把握に重要です。手指の冷感や色調の変化の有無を併せて評価することが大切になります。

大腿動脈

 

大腿動脈を触知するためには、下肢のつけ根のやや内側を触知します。大腿動脈は比較的深部を走行しているのでやや圧迫するようにして触知していきます。下肢を伸展させ軽度外転することで触知しやすくなります。

大腿動脈は血圧を反映するとされており、緊急時の脈拍確認部位として重要です。また、下肢の血行状態を把握するためにも重要な動脈です。

 

リハビリのPOINT

大腿動脈を触知する場面はリハビリの中では少ないでしょう。下肢の末梢動脈に閉塞や狭窄がある場合には左右差の有無を評価することもあります。

足背動脈

 

足背動脈を触知するためには、長母趾伸筋腱と第2長趾伸筋腱の間を触知します。また、足関節の前方でも触知することが可能です。足背動脈の走行は個人差があるため触知部位をずらしながら脈拍が触れる位置を探します。

足背動脈は下肢の血行動態の左右差を評価するためにも重要な動脈です。

 

リハビリのPOINT

足背動脈の触知は下肢の血行動態を把握するために重要です。下肢の冷感や色調などの情報と統合して患者さんの状態を推測することが大切になります。

 

脈拍数の正常値と異常要因

 

脈拍数の正常値は一般成人では60~100回/分といわれています。

正常値の100回/分を超える場合を頻脈といいます。反対に正常値の60回/分より少ない場合を徐脈といいます。

脈拍数の正常値は新生児で多くなります。新生児の脈拍数の正常値は100~140回/分にも及びます。新生児は末梢組織での酸素需要が多く、循環機能が未発達のため生理的に脈拍数が多くなります。反対に高齢者では脈拍数の正常値が低くなります。高齢者の脈拍数の正常値は60~80回/分程度になります。高齢者では代謝機能低下や活動量低下により末梢での酸素需要が減るため脈拍数が少なくなります。

 

生理的な頻脈の要因

 

生理的な頻脈の要因として、運動、食事、入浴、精神的ストレスがあります。

 

運動時には骨格筋を収縮させるために骨格筋での酸素需要が増加します。末梢への血流量を増やすために脈拍数が増えます。頻脈になることでより多くの酸素を末梢の骨格筋に運搬することができます。

 

食事後には腸管での栄養素の吸収が促進されます。吸収された栄養素は門脈を経由して肝臓にて代謝が行われます。腸管・肝臓での酸素需要が増大するため、頻脈となりより多くの酸素を消化器に運搬するように循環動態が変化します。

 

入浴後には交感神経の活動が活発になります。交感神経の活動時には闘争や逃走を行うために末梢の骨格筋への循環血液量が増大します。より多くの酸素を末梢組織に運搬するために頻脈が生じます。

 

精神的ストレスを受けると交感神経の活動が活発化します。入浴後と同様に末梢の骨格筋への循環血液量が増大します。その結果として頻脈が生じます。

 

リハビリのPOINT

運動後の脈拍数の増加はリハビリにおける負荷量の調節に役立ちます。食後・入浴後には生理的に脈拍数の上昇が起こることを頭に入れて脈拍数を解釈することが大切です。精神的ストレスは特に入院中の患者さんの不穏状態や興奮状態の際には脈拍の上昇が起こることを理解しておくといいでしょう。

生理的な徐脈の要因

 

生理的な徐脈の要因としては、睡眠時が挙げられます。

睡眠時には副交感神経の活動が活発になります。副交感神経の活動時には末梢組織の酸素需要が減少します。末梢組織に酸素を運搬する必要量が減少するため徐脈が生じます。

 

リハビリのPOINT

ここに文章覚醒が低いときには徐脈が生じます。寝ている患者さんを起こして介入する際には脈拍数が低いことがあります。覚醒が向上するに従って脈拍数が上昇していることを評価していきます。

病的な頻脈の要因

 

病的な頻脈の要因としては、発熱、貧血、心不全甲状腺ホルモン分泌過剰、頻脈性不整脈があります。

発熱時には、熱産生を行う必要があります。熱産生臓器としては肝臓が重要な働きをします。肝臓での代謝が亢進することで発熱に必要な熱を産生します。肝臓での酸素需要が増大するため肝臓への血流量を増加させるために頻脈が生じます。

 

貧血時には、血液の酸素運搬能力が低下します。末梢組織が活動するために必要な量の酸素を供給するためにより多くの血液が必要になります。末梢組織への血流量を増大させるために代償的に頻脈が生じます。

 

心不全が生じているときには、心拍出量が低下します。心拍出量は1回拍出量×脈拍数で決まります。心不全により1回拍出量が減少することで脈拍数が代償的に増加します。末梢組織に十分な酸素を運搬するために頻脈が生じます。

 

甲状腺ホルモン分泌が亢進しているときには、肝臓での代謝が亢進します。肝臓での酸素需要が増大します。肝臓への血流量を増加させるために頻脈が生じます。

 

不整脈の中でも頻脈性不整脈心臓刺激伝導系に異常興奮が生じている場合に出現します。バックグラウンドに虚血性心疾患や心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症などが関係しています。

 

リハビリのPOINT

頻脈を引き起こす要因がある場合には、介入ごとの脈拍数の変化を評価していくことが重要です。治療中の場合には脈拍数の変化が症状改善の指標になってきます。

病的な徐脈の要因

 

病的な徐脈の要因として、甲状腺ホルモン分泌低下、薬剤、徐脈性不整脈があります。

甲状腺ホルモン分泌が低下しているときは、肝臓での代謝が低下します。肝臓での酸素需要が減少することで肝臓への血流量を減少させるため徐脈が生じます。

 

薬剤には交感神経活動を抑制する副作用を持つものがあります。交感神経活動が抑制されることで末梢での酸素需要が減少します。末梢に酸素を運搬する必要量が減少するため徐脈が生じます。

 

徐脈性不整脈も頻脈性不整脈と同様に心臓刺激伝導系に異常が生じている場合に出現します。バックグラウンドとして何らかの心臓疾患が関連している可能性があります。

 

リハビリのPOINT

徐脈が出現しているときには末梢組織に十分な酸素が供給されていない可能性があります。呼吸状態や呼吸苦の自覚症状の有無を併せて評価することが必要です。

 

脈拍数の左右差

 脈拍数の左右差が生じている場合に考えられる病態として、末梢動脈の閉塞や狭窄があります。脈拍数の左右差が生じる原因として、大動脈解離、大動脈炎症候群、急性動脈閉塞症、閉塞性動脈硬化症、閉塞性血栓血管炎などがあります。

大動脈解離

 

大動脈解離は大動脈の中膜が剥離し解離した空間に血液が流入することで生じます。大動脈の破裂や剥離部分による圧迫での閉塞により症状が出現します。大動脈解離が鎖骨窩動脈に至ると鎖骨窩動脈の閉塞が生じます。鎖骨窩動脈より末梢部の血管の脈拍が減弱や消失します。

大動脈炎症候群

 

大動脈炎症候群は大動脈とその主要な分枝動脈に非特異的な炎症が生じる疾患です。炎症の出現と炎症による血管壁の瘢痕化により動脈壁の狭窄・閉塞・拡張を生じます。動脈に炎症が生じる原因として自己免疫疾患の関与が疑われています。この動脈炎が鎖骨窩動脈に至ると上肢の脈拍の左右差が生じます。

急性動脈閉塞症

 

末梢動脈に血栓が詰まり閉塞を生じる疾患です。末梢動脈の血流が途絶した状態となります。血栓を生じる要因として心房細動や心臓粘液腫などの既往、血液凝固能の亢進や動脈硬化などの血栓の誘因が挙げられます。末梢動脈が閉塞することで脈拍の消失・減弱が生じます。

閉塞性動脈硬化

 

閉塞性動脈硬化症は下肢の末梢動脈の動脈硬化により下肢の慢性的虚血を引き起こす疾患です。誘因として高血圧、糖尿病、高脂血症や喫煙があります。下肢末梢動脈の閉塞により脈拍の減弱・消失が生じます。

閉塞性血栓血管炎

 

膝窩動脈や前腕動脈以遠の細い動脈に好発する血管炎を呈する疾患です。末梢動脈に血管炎が生じることで動脈の狭窄・閉塞・血栓形成が起こります。橈骨動脈や足背動脈の脈拍の減弱・消失が生じます。

 

リハビリのPOINT

いずれの動脈疾患においても末梢動脈の左右差・上下肢の差を評価することが大切です。併せて四肢末梢部の冷感や皮膚蒼白などの症状の有無を評価します。閉塞性動脈硬化症や閉塞性血栓血管炎では間欠性跛行と呼ばれる特異的な症状が出現します。

 

血圧を推定できる動脈

 

脈拍は心臓から距離が離れるほど弱くなります。この原理を利用して簡易的に脈拍から血圧を推定することができます。緊急時の簡易的な測定やリハビリ中の患者さんの状態変化を把握するために役立ちます。血圧を推定できる動脈は以下の3か所です。

 

リハビリのPOINT

リハビリにおいては低血圧傾向の患者さんに介入する際に、起立性低血圧の出現や血圧の低下が起きていないかを簡易的に評価するときに便利です。異常を発見したときにはすぐに血圧測定を行って確かめることが必要です。

脈拍のリズム

 

本来は心臓の拍動と末梢動脈の脈拍数は一致します。心臓の収縮リズムが崩れる(不整脈)と脈拍数のリズムにも変化が生じます。脈拍のリズム不整には、呼吸性不整脈期外収縮、絶対性不整脈の3種類があります。

呼吸性不整脈

 

呼吸性不整脈は吸気時に脈拍が速くなります。若年者に多くみられます。吸気時には交感神経活動が活発化します。交感神経活動が活発化することにより心拍出量を増大させるために脈拍数が速くなります。病的な意義はないと言われています。

期外収縮

 

期外収縮は正常なリズムの中で突然1拍抜けたように拍動する状態です。心臓において通常のリズムより速いタイミングで収縮が起こることがあります。この場合、心室内には十分な血液が溜まっていない状態で拍出されることになります。拍出される血液が少ないため末梢動脈での動脈圧が少なくなり脈拍が抜けたようになります。心疾患の既往がある場合や頻回に出現する場合には心室頻拍や心室細動のような致死性不整脈に移行するリスクがあります。心疾患の既往がない場合には心機能に影響を及ぼさないことがほとんどです。

絶対性不整脈

 

絶対性不整脈は脈拍のリズム・大きさがすべて不規則な状態です。ほとんどの場合は心房細動によって不規則な心臓収縮が起こっていると考えられます。

 

リハビリのPOINT

脈拍のリズム測定は不整脈の有無をスクリーニングするために役立ちます。期外収縮は数回であれば問題ありませんが頻発するようであれば致死性不整脈が出現するリスクがあります。絶対性不整脈がある場合には心房細動の有無を疑います。心房細動がある場合には心拍出量が通常より10~20%減少するため心不全につながるリスクがあります。

 

 結論:脈拍測定は脈拍数だけでなく異常を引き起こす要因、左右差、リズムのアセスメントをすることが重要

 脈拍測定は臨床現場で簡単に状態の変化をアセスメントすることができます。脈拍数の変化のみに着目するのではなく、異常が生じる要因の把握や左右差の評価、リズムの不整の有無を評価しておくことが重要です。

 

患者さんの状態を正しく理解することが適切なリハビリプログラムを立案する上でも大切になります。