リハビリ医学知識!膀胱留置カテーテルの役割とリハビリの注意点
膀胱留置カテーテルには様々な使用目的があります。また、尿道にカテーテルを挿入しているために生じる様々な合併症やリスクもあります。
この記事では、膀胱留置カテーテルの役割とリハビリを行うときの注意点について紹介していきます。
- 膀胱留置カテーテルとは
- 膀胱留置カテーテルの目的と適応
- リハビリ実施中の注意点と観察ポイント
- 膀胱留置カテーテルの合併症の予備知識
- 結論:膀胱留置カテーテルの使用目的とリスクを把握してリハビリすることが重要
膀胱留置カテーテルとは
膀胱留置カテーテルは尿を体外に排出するための泌尿器科的処置です。
『膀胱留置カテーテル』
膀胱留置カテーテルは、カテーテルの先端についているバルーンを膨らませることで、膀胱にカテーテルを留置します。膀胱留置カテーテルは、バルーンカテーテルと呼ばれることもあります。
自力で排尿することができない患者に使用されることが多く、間欠的導尿を何度も行う場合に比べて、苦痛が少なく、尿量を正確に把握できるなどのメリットがあります。
膀胱留置カテーテルを挿入しておくことで、持続的に尿を排出することができます。
膀胱留置カテーテルの目的と適応
膀胱留置カテーテルの目的には以下の7つがあります。
膀胱留置カテーテルが挿入されている際には、正確な尿量の測定が必要な状態や排尿の機能的障害があることを頭に入れてリハビリをしていくことが大切です。
リハビリ実施中の注意点と観察ポイント
膀胱留置カテーテル挿入中の患者さんにリハビリを実施する際にはいくつかの注意点や観察すべきポイントがあります。
蓄尿バッグの位置と尿路カテーテルの管理
蓄尿バッグの位置は必ず膀胱より下になるように設置します。
膀胱より高い位置に蓄尿バッグがあると尿の逆流が起こる危険性があります。尿の逆流が起こると逆行性感染のリスクが高まります。
また、蓄尿バッグは床に着かないようにします。床に蓄尿バッグがついてしまうと細菌が蓄尿バッグ内に侵入し感染のリスクを高めます。
さらに、カテーテルにねじれや折れがあると尿の流出が妨げられてしまいます。リハビリ終了時に患者さんを臥床させるときには膀胱留置カテーテルにねじれや折れがないかを確認することが大切です。
感染徴候の有無を確認
膀胱留置カテーテル挿入中は、膀胱と外界がつながっている状態になります。長期間の膀胱留置カテーテル挿入は尿路感染のリスクを高めます。
CRPやWBCの検査数値のチェックだけでなく体温の変化も観察しておくことが大切です。
尿量・性状のチェック
膀胱留置カテーテルの挿入中は尿量を正確に測定できます。
尿量が減少していれば循環血液量の減少が考えられます。循環血液量が少ないと起立性低血圧などが出現するリスクが高くなります。In-Outバランスを正確に把握できることはリスク管理に役立ちます。
また、尿色や出血の有無をチェックすることも大切です。
尿の色調から脱水傾向の有無や感染症の有無を推測することもできます。
膀胱留置カテーテルの合併症の予備知識
リハビリの場面で直接関係することは少ないですが、予備知識として役立つ合併症の知識を紹介していきます。
尿路感染症
『尿路感染症』
膀胱留置カテーテルでは、無菌操作にて挿入しても2週間ほどで尿細菌が発生します。医療機関でも在宅でも尿路感染症のリスクが高いことを頭に入れておきましょう。
尿路結石
『尿路結石』
尿成分の一部が析出・結晶化し、これらが集合・沈着・増大して尿路内(腎・尿管・膀胱・尿道)で形成された石様の構造物を尿路結石という。
出典:病気がみえるVol.8 腎・泌尿器
膀胱留置カテーテルを長期挿入することでカテーテル周囲に膀胱結石が形成されることがあります。
その他の合併症として、カテーテル挿入時の尿道の損傷、膀胱の廃用症候群、膀胱痙攣による疼痛などがあります。
結論:膀胱留置カテーテルの使用目的とリスクを把握してリハビリすることが重要
膀胱留置カテーテルが挿入されている患者さんにリハビリを行う際には、どういった目的で使用されているかを把握しておくことが大切です。
どのような治療目的で使用されているかを頭に入れたうえで必要なリハビリプログラムを考えていくことが大切です。
医療現場でも在宅でも膀胱留置カテーテルのリスクと合併症を理解した上で患者さんの状態に変化がないか、特に尿路感染症の有無に注意を払うことが重要です。