リハビリ薬剤知識!ヘパリンの役割とリハビリの注意点
リハビリのリスク管理において薬剤の知識は重要です。リハビリ中のリスク管理だけでなく生活指導においても薬剤の知識を持っておくことは大切です。
この記事では医療現場でよく見かける『ヘパリン』の役割とリハビリの注意点について紹介していきます。
ヘパリンとは
医療現場でよく見かける『ヘパリン』は、抗凝固作用を持つ薬剤です。
『ヘパリン』
ヘパリン(heparin)は抗凝固薬の一つであり、血栓塞栓症や播種性血管内凝固症候群(DIC)の治療、人工透析、体外循環での凝固防止などに用いられる。
Wikipediaにもあるように血管内血液凝固症候群や体外循環装置使用時の血液凝固防止、血管カテーテル挿入時の血液凝固防止、輸血や血液検査の際の血液凝固防止、血栓塞栓症の治療及び予防に用いられます。
ヘパリンNaロック・ヘパフラッシュとは
看護師さんがよく使用しているヘパリンNaロックやヘパフラッシュは静脈内に留置したルート内の血液凝固防止に用いられます。
静脈内に血管留置カテーテルを留置した状態で1日に何度か点滴を行う場合には、血管留置カテーテルのルート内をヘパリンNaロックやヘパフラッシュで満たしておく必要があります。
血液は血管内から出ると凝固を始めてしまうので、ルート内の血液が凝固してしまいます。ルート内の血液が凝固してしまうとそのルートを使えなくなってしまうのでヘパリンを使用して凝固を防いでいます。
リハビリ職には馴染みの薄い行為ですので予備知識として紹介しておきます。
参考文献:ヘパリンロックとは? 正しい手順・量・フラッシュについて | 看護に役立つ【ナースプレスbyナース専科】
ヘパリン使用時のリハビリの注意点
ヘパリン使用時のリハビリには以下のような注意点があります。
脳出血のリスク
ヘパリン使用時には脳出血が出現するリスクがあります。
ヘパリンにより出血傾向が強い患者さんの場合には脳血管が破綻することで大量出血するリスクがあります。
排便時に強くいきむことで血圧が急激に上昇し脳出血を起こすリスクが高くなります。息をこらえる動作をしないよう生活指導していくことやリハビリ場面で等尺性収縮の訓練を行わないように注意が必要です。
介入時には便秘の有無を確認することも重要でしょう。
消化管出血による吐血・下血リスク
ヘパリン使用時には消化管出血が生じるリスクがあります。
既往に消化管の疾患がある場合には、消化管が脆弱化しており破綻することで出血する可能性があります。
既往に消化管の疾患がある場合には、下血・吐血の有無をチェックしておきましょう。
出血がある場合には貧血やショックが生じるリスクがあります。貧血による頻脈や循環性ショックによる血圧低下が生じる可能性があります。バイタルサインのチェックが重要になります。
打撲などの外傷による出血リスク
出血傾向のある患者さんは簡単なことで皮下出血や紫斑が起こります。
転倒や打撲による外傷だけでなく、締め付けの強い衣服などでも出血が起こります。患者さんに徒手療法を行うときには愛護的に行う注意が必要です。
また、移乗や歩行を行う際に車椅子や手すりなどに四肢をぶつけないように細心の注意を払いましょう。ベッド上でのスライドもできる限り接地面の負担を少なくするようにしていきます。
衣服やシーツのしわも局所圧迫の原因となるため整えるようにします。さらに、掻痒感の強い患者さんは掻き毟ることで出血することがないように指導していくことが必要です。
過剰なマッサージや徒手療法による出血リスク
過度に負荷をかけての徒手療法は筋組織を損傷させ出血を起こすリスクがあります。
過剰なストレッチや筋力訓練は筋組織を破壊することで出血を引き起こします。出血傾向の患者さんの場合では紫斑や皮下出血の起こる原因になります。徒手療法は負荷量を調整していくことが大切です。
また、血圧測定の際に必要以上にマンシェットで加圧すると加圧部に皮下出血が生じることがあります。普段のバイタルサインを把握し必要以上の加圧を避けるようにしましょう。
参考文献:【血液疾患患者の看護】看護学生レポート
結論:ヘパリン使用中には出血傾向に注意
ヘパリンを使用している患者さんのリハビリを行うときには、出血傾向のリスクに十分注意が必要です。
ちょっとした刺激でも出血が起きやすいので、
- 衣服を緩めのものにする
- 入浴時に皮膚を強くこすらないようにする
- 鼻出血防止のため鼻を強くかまない
- 口腔内出血防止のため歯ブラシは柔らかいものを使用する
- 気道出血防止のため咳は小さめにする
といった生活指導もリハビリでの重要な役割になります。